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伊藤園の株価はなぜ下がり続けているのか?業績とのギャップを探る

株式会社 伊藤園(東証:2543):株式分析

August 7, 2025

1. はじめに

伊藤園は、日本最大の緑茶メーカーとして「お〜いお茶」ブランドで広く知られています。健康志向やサステナビリティ、そして革新への取り組みにおいても高い評価を受けてきました。業績は安定しており、成長戦略も積極的に展開されていますが、それにもかかわらず株価は数年にわたって下落傾向を続けています。本レポートでは、株価が下落している背景を分析するとともに、今後の回復の可能性について検討します。

2. 株価の推移と現状

伊藤園の株価は、業績が堅調に推移しているにもかかわらず、過去数年にわたり一貫して下落を続けています。2021年4月末には約6,050円だった株価は、2025年4月末には約3,420円まで下がり、4年間でおよそ40%の下落となりました。

年度末時点の株価推移

年度株価(円)前年比変化
2021年6,050円
2022年5,340円-12%
2023年4,210円-21%
2024年3,830円-9%
2025年3,420円-11%

主なポイント

  • 続く下落基調:4年間連続で下落しており、反発の兆しは見られません。

  • 最も大きな下げ幅:2022年から2023年にかけての下落(-21%)が最も大きく、投資家の期待修正が反映されたと考えられます。

  • 好業績への反応の鈍さ:2024年3月期に過去最高の営業利益を記録したにもかかわらず、株価は翌年も下落しており、市場には根強い懐疑的な見方が存在することがうかがえます。

考察

このような下落傾向は、市場における評価の見直しが進んでいることを示唆しています。具体的には:

  • 高PER銘柄からの資金シフト:ディフェンシブ銘柄に対する過去の高評価が見直されつつある可能性。

  • 短期的な成長の不透明感:中長期の投資は進んでいるものの、目先の成長が見えにくい状況。

  • 海外展開の実効性への懸念:グローバル戦略が利益成長に結びつくまでに時間がかかるとの見方。

3. 財務・事業パフォーマンス

伊藤園は、安定した財務基盤を維持しており、売上・利益ともに堅実な成長を続けています。

主な財務指標(単位:百万円)

決算期(4月)売上高営業利益当期純利益EPS(円)配当金(円)
2021年4月期446,28116,6757,01155.140
2022年4月期400,76918,79412,928103.940
2023年4月期431,67419,58812,888103.840
2024年4月期453,89925,02315,650126.442
2025年4月期472,71622,96914,156117.544

コメント

  • 利益体質の安定性:コロナ禍の影響を受けた2022年4月期を除けば、売上・利益ともに堅調な回復基調にあります。

  • 配当の増配傾向:配当金は過去3年連続で引き上げられており、株主還元姿勢が明確です。

  • 利益水準の持続性:営業利益率も改善傾向にあり、事業の効率性が高まっていることがうかがえます。

4. なぜ株価は下落しているのか?

伊藤園は堅調な業績を維持しているにもかかわらず、株価は長期にわたって下落しています。このギャップには、いくつかの要因が関係していると考えられます。

① バリュエーションの修正

2021年4月期当時、伊藤園の株価はPER(株価収益率)100倍超という非常に高い水準で取引されていました。
しかし、現在のEPS(1株あたり利益)が117.5円であるにもかかわらず、株価は3,417円と、PERはおよそ29倍まで低下しています。

過去の過熱評価が正常水準へと見直されつつある可能性が高いと考えられます。

② 利益成長の停滞感

売上は着実に伸びているものの、純利益の水準は2022年以降ほぼ横ばいで、大きな成長は見られていません。
EPSも年度ごとに上下しており、明確な成長トレンドを描けていない点が、成長株としての魅力を損ねていると見られます。

③ 国内市場の成長余地が限られる

日本の飲料市場はすでに成熟しており、新たな成長機会を見出しにくい環境です。
特に伊藤園が強みとする緑茶カテゴリーはシェアが高い反面、伸びしろが限られるため、炭酸飲料やアルコール飲料などの成長分野に比べると将来性が読みづらいという側面があります。

④ 海外展開の進捗が緩やか

伊藤園は北米での抹茶製品など、海外市場への展開を進めていますが、事業規模はまだ限定的です。
中長期的には収益源として期待できるものの、短期的にインパクトを与えるほどの規模感には至っていないため、市場からの評価が追いついていない可能性があります。

⑤ 投資家のスタイルシフト

世界的に株式市場では、「成長性の高い銘柄」や「割安感のある銘柄」への資金シフトが起きています。
その中で、ボラティリティが低く、成長も割安感も中途半端な中間層の銘柄は注目されにくい傾向があり、伊藤園もその対象になっていると見られます。

5. 戦略と技術面でのポジショニング

株価下落という逆風の中にあっても、伊藤園は着実に戦略的拡大と技術革新を進めています。

● グローバル抹茶ビジネスの展開

伊藤園は、抹茶の健康価値と独自製法を活かし、食品メーカー向けのB2Bソリューション型ビジネスを北米中心に拡大中です。これは、飲料事業にとどまらず、原材料としての抹茶の可能性を世界に広げる試みです。

● サステナビリティ分野での先進的取り組み

使用済み茶殻の再資源化率は56%超、さらにペットボトル使用量の削減にも積極的に取り組んでおり、国内飲料業界の中でも環境対応の先頭を走る存在です。

● 中期経営計画(2025〜2029年度)

「グローバルティーカンパニー」への進化を掲げ、

  • デジタル化(AI・DX)

  • 人的資本への投資

  • ESG視点での経営強化

といった、将来を見据えた基盤づくりに注力しています。

● 評価が追いついていない可能性

これらの取り組みは長期的な成長を視野に入れたものであり、足元の利益や株価にはまだ十分に反映されていない可能性があります。

6. 株価は今後回復するのか?

現在のバリュエーション(2025年4月時点)

  • 株価:3,417円

  • EPS(2025年4月期):117.5円

  • PER:約29倍

  • 配当利回り:約1.29%

過去の高水準に比べると、現在の株価は大きく割安感が増しているものの、それでも日本株全体の平均PER(約15~17倍)と比べればなお高水準です。

回復の可能性はあるのか?

今後、以下のような要素が実現すれば、株価の反転上昇につながる余地は十分にあると考えられます。

海外事業の本格的な拡大

アメリカ、欧州、アジア市場で抹茶や緑茶製品の需要が高まれば、伊藤園のグローバル売上は加速する可能性があります。

新たなビジネスモデルの成功

健康志向のEC事業や、原材料としての抹茶のB2B販売デジタルマーケティングの展開により、これまでにない収益源が開拓されることが期待されます。

ESG評価の向上

カーボンニュートラルや再資源化といった取り組みが進む中で、ESG投資を重視する機関投資家の注目が高まれば、株価の再評価につながる可能性があります。

EPS成長の再加速

今後数年間でEPSが持続的に成長すれば、投資家の期待も回復し、株価の上昇要因となるでしょう。

7. リスク要因

今後の成長や株価回復に向けて、以下のようなリスクが考えられます:

リスク区分内容
実行力海外展開は長期的視点で進められているものの、現地ニーズとのギャップや文化的な障壁により、期待どおりのスピードで成長が実現しない可能性があります。
コスト構造原材料価格やエネルギー費、物流コストの上昇は、利益率の圧迫要因となり得ます。特に円安局面では調達コストが上昇しやすく、慎重なマネジメントが求められます。
為替リスク円高が進行した場合、海外収益の円換算額が目減りし、連結業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
投資家心理伊藤園が強調するESG戦略は中長期的に評価される余地がありますが、短期的な株価評価に直結するとは限らず、市場の関心を引きづらい局面もあると考えられます。
 

8. まとめ

伊藤園の株価は過去4年間にわたり下落を続けてきましたが、その間も事業は安定的に推移しており、業績悪化ではなく「過去の過熱評価の修正」や「慎重な投資家心理」が主因と考えられます。

一方で、同社が掲げるグローバル展開の加速、ESG先進企業としての地位、そして製品戦略の革新性は、長期的には評価の見直しにつながる可能性があります。

今後、EPSの成長が再び加速したり、海外売上が存在感を増すようであれば、現在の株価水準からの反転も十分に期待できるでしょう。

現時点の評価:

企業としては健全だが、「次の成長のきっかけ(カタリスト)」を待っている状態。

注視すべきポイント:

  • FY2026の業績

  • 海外事業の開示内容

  • EPS成長の持続性

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