
1. 企業概要
ホクリヨウ株式会社(TSE:1384)は、日本有数の鶏卵生産企業です。雛の育成から採卵・包装・出荷までを自社で一貫して行う「垂直統合型モデル」を採用しており、問屋を介さず全国の大手スーパーへ直接販売する独自の流通網を構築しています。
北海道(札幌、十勝、登別、北見、千歳、早来)、東北(盛岡、はまなす、吉目木)に農場・支店を展開
雛の育成も専用施設で自社運営
ブランドメッセージは「庭園農場でつくられたたまご」——自然環境と衛生管理の両立を重視
2. 業績推移(2023年3月期〜2025年3月期)
決算期 | 売上高(億円) | 純利益(億円) | EPS(円) | 配当(円) | ROE(%) | PER(倍) |
---|---|---|---|---|---|---|
2023年3月期 | 178 | 7.5 | 88.13 | 20.0 | 7.1 | 9.2 |
2024年3月期 | 189 | 16.6 | 195.81 | 40.0 | 14.4 | 5.4 |
2025年3月期 | 194 | 21.8 | 257.93 | 70.0 | 16.5 | 5.4 |
EPSの年平均成長率(CAGR)は67.7%と急成長
配当も着実に増配を継続し、2025年の配当性向は27.1%と適正水準
ROEは16.5%まで拡大し、資本効率の高さが際立つ
3. 株価推移と上昇要因
2023年初頭には約700円だった株価は、2025年半ばには1,500円を超え、2年余りで2倍以上に上昇。
上昇の主な背景:
採算改善と卵価上昇による利益急拡大
高齢化社会における「安心・安全・トレーサビリティ」へのニーズ増
ESGに配慮した動物福祉(アニマルウェルフェア)への積極投資
問屋を通さない直販体制による価格決定力と安定的な利益率
飼料高や鳥インフルエンザといった逆風下でも、安定経営を継続
4. アニマルウェルフェア(AW)とESGへの取り組み
ホクリヨウは、国際的な動物福祉の基準である「5つの自由(Five Freedoms)」に基づいた養鶏を推進しています。
空腹と渇きからの自由
→ 衛生的で栄養価の高い飼料を適切に提供不快からの自由
→ 適温・適湿の環境と十分な飼育スペースを確保痛み・ケガ・病気からの自由
→ くちばしの切除(ビークトリミング)を行わず、適切な治療体制を整備恐怖やストレスからの自由
→ 丁寧な飼育管理と人道的な取扱いを徹底自然な行動ができる自由
→ 止まり木・巣箱・砂浴び場を備えた「平飼い(Aviary方式)」を導入(吉目木・札幌農場など)
また、全卵にロット番号と賞味期限を印字する完全トレーサビリティ体制を構築し、パック工場はすべてFSSC22000認証を取得。衛生・品質・環境配慮のバランスを重視しています。
5. 投資判断と今後の見通し
PERは5.4倍、PBRも1倍未満と依然割安圏
配当利回りは4%以上で、今後も増配が期待される
小型株で流動性には注意が必要だが、安定配当とESGテーマを両立した中長期の「コア銘柄候補」
鶏卵という生活必需品を扱いながら、先進的な経営と持続可能性への取り組みを進めるホクリヨウは、食の安全性と倫理的な生産に注目が集まる今、株価の更なる評価余地がある企業といえるでしょう。
結論
ホクリヨウは、安定した収益性・高ROE・増配基調という強固なファンダメンタルズを背景に、株主還元と社会的責任の両立を実現している企業です。
「問屋を介さない流通」や「アニマルウェルフェア」など、差別化されたビジネスモデルにより、消費者・投資家の双方から支持を獲得しています。PERや配当利回りを踏まえた現在の株価水準は、長期的に見て依然として魅力的であり、ESG視点を取り入れたポートフォリオ構築にも適した銘柄です。
免責事項
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資助言を行うものではありません。記載内容は執筆時点の公開情報に基づいています。投資判断は各自の責任で行い、必要に応じて有資格の金融アドバイザーにご相談ください。Wasabi-Info.comは、本レポートの利用により生じたいかなる損害についても責任を負いません。