株価動向・経営戦略・今後の見通し(2025年7月時点)

1. 株価動向と業績概況
ハニーズホールディングスは、製販一体型(SPA)モデルを強みに、安定した売上成長を継続しています。一方で、2025年5月期の決算では原材料費・人件費の上昇や販売促進費の増加により利益が減少。株価も52週高値の1,785円から下落し、7月28日時点で1,467円前後で推移しています。
2025年5月期 売上高:577億円(前年比+2.0%)
営業利益:59億円(前年比–15.3%)
純利益:37億円(前年比–23.5%)
EPS(1株利益):175円 → 今期予想は130〜140円
配当予想:55円(利回り 約3.7%)
予想PER:約7.7倍
増収にもかかわらず利益が落ち込んだ背景には、国内外のコスト上昇と販売促進費の増加がありました。
2. 利益減少の要因分析
コスト上昇圧力:
人件費と物流費の増加:特にミャンマー工場の賃金上昇と国内店舗の人件費負担が顕著。
販管費:前年比+4.1%。広告宣伝費、店舗関連コスト、物流費の増加が影響。
粗利益率:59.2%(前年比–1.1pt)
→ 季節商品の売れ残りによる値下げ対応が響いた。
天候要因:
春〜初夏の気温が想定より低く、該当シーズン商品の売れ行きが鈍化。
3. 戦略的取り組み
EC事業の拡大
EC売上:前年比+14.3%、71億円に成長
売上比率:12.1%(前年比+1.3pt)
強化ポイント:
UI/UXの改善
MA(マーケティングオートメーション)導入
SNS・Web広告との統合運用
店舗受け取り(Click & Collect)サービスの拡充
ミャンマー生産体制
従業員数:5,335人(前年比+787人)
第3工場が本格稼働へ移行中
生産の安定化に加え、閑散期の生産シフトによる原価低減も推進
4. 財務健全性とキャッシュフロー
決算期 | 売上高 | 純利益 | 自己資本比率 | ネットキャッシュ |
---|---|---|---|---|
2023/5 | 549億円 | 53.4億円 | 81.3% | 強固 |
2024/5 | 566億円 | 48.8億円 | 84.8% | 強固 |
2025/5 | 577億円 | 37.3億円 | 非開示(高水準) | 強固 |
有利子負債ゼロ
現預金:128億円(2025年5月末時点)
フリーキャッシュフローも黒字を維持
5. ビジネスモデルと競争優位性
SPA(製販一貫)モデル:企画・生産・物流・販売を一体管理
主力商品:カジュアル/通勤服/雑貨など、10〜50代女性向け
国内店舗数:約900店舗(2025年時点)、地方商業施設中心の出店
ASEAN生産拠点:原価管理と在庫リスクの抑制に寄与
6. リスク要因
カテゴリ | 内容 |
---|---|
コストインフレ | ミャンマーと国内の人件費上昇、原材料・燃料の変動 |
地政学リスク | ミャンマー依存度の高さ(政治リスク・ESGリスク) |
競争環境 | EC市場やファストファッションとの競合激化 |
ブランド維持 | 若年層への訴求力維持が課題 |
天候依存 | 商品売れ行きが気候に左右されやすい |
ESG関連 | サプライチェーン透明性、労働環境などの外部評価強化の可能性 |
7. 現在の株価評価と市場の見方
指標 | 数値 | 評価 |
---|---|---|
PER(実績) | 約8.3倍 | 割安圏 |
PER(予想) | 約7.7倍 | 収益懸念を織り込み済み |
PBR | 約0.9倍 | 純資産割れ |
配当利回り | 約3.7% | 魅力的 |
PSR(売上高倍率) | 約0.7倍 | 小売業として割安水準 |
バリュエーション的には下値余地は限定的と見られ、中長期での安定配当を狙う投資家には魅力的。
8. 今後の展望と投資判断
財務基盤の強さと生産体制の柔軟性が下支えに。
保守的な経営方針と安定的な配当政策も安心材料。
中期的な株価上昇には利益率回復とEC・ブランド戦略の進化が必要。
ポジティブ材料:
コスト構造の最適化による利益率改善
ECシフトとモバイル重視戦略の加速
ブランド再構築と店舗リニューアルによる客層拡大
注意点(リスク):
ミャンマーの政情不安やサプライチェーンリスク
物流コスト・人件費のさらなる上昇
ファッショントレンドへの適応力の遅れ
9. 総合評価
強み | 課題 |
---|---|
債務ゼロ・強固な財務体質 | 2025年度の利益圧迫 |
安定的な配当と株主還元 | ミャンマー依存のリスク |
SPAモデルによるコスト優位 | ブランド刷新の必要性 |
EC拡大による成長余地 | 海外展開の限定性 |
投資判断(中立〜やや強気):
ハニーズは、日本の中堅アパレル企業の中でも財務健全性が高く、安定配当を狙えるディフェンシブ銘柄です。短期的な利益調整局面ではありますが、コスト改革とデジタル戦略が軌道に乗れば、中期的な再評価(リレーティング)の可能性もあると考えられます。
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