1. 株価動向と業績の概観
関西電力(KEPCO)は、2023年3月期に純利益177億円まで落ち込んだ後、2024年3月期には4,419億円、2025年3月期には4,204億円へと急回復を遂げました。
しかし、2026年3月期には純利益が2,950億円へと約30%の減少を見込んでおり、「利益のピークは過ぎたのではないか」という懸念が市場に広がり、株価は2024年5月以降、じわじわと下落しています。
2. 2026年3月期の減益要因
2024~2025年の利益増は一時的な追い風によるものであり、2026年以降は以下のような構造的なコスト圧力が想定されています。
減益要因の内訳:
燃料費調整効果の剥落
過去2年間の利益増は、LNGや石炭価格の下落を受けた調整遅れによる一時的な利益押上げによるもの。2026年には調整が進み、この効果は消失。販売マージンの縮小
電力自由化の進行と需要の伸び悩みから、電力販売マージンは低下する見込み。固定費の増加
原発の再稼働、安全対策、ゼロカーボンへの設備投資により、減価償却費や保守費が増加し、利益を圧迫。規制事業の利益制限
一部の送配電事業などは規制下にあり、利益の上限が定められているため、大型投資を行っても即座の収益拡大は難しい。
3. 2024年5月以降の株価下落 – 投資家心理の変化
2025年3月期の好業績にも関わらず、関西電力の株価は2024年5月から下落に転じました。その背景には以下の懸念があります:
投資家の警戒感の主な要因:
利益ピーク感の台頭
2024~2025年の業績が一時的要因によるものと認識され、2026年の減益予想が「ピークアウト」を裏付ける材料となった。資本支出(CapEx)の重荷
脱炭素対応や原発投資により、フリーキャッシュフロー(FCF)圧迫が意識され、長期ROEに懸念。成長の遅れと投資収益のタイムラグ
再エネや通信、海外事業などへの多角化は進行中だが、収益貢献には時間がかかると見られている。バリュエーション圧縮
2025年時点ではPER約4倍と割安感があったが、2026年にはEPSが436.09円 → 264.80円に低下する見込みで、評価が引き下げられた。
4. 主要業績指標(連結ベース)
決算期 | 売上高(億円) | 純利益(億円) | EPS(円) | ROE(%) | 自己資本比率(%) | 年間配当(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
FY2023 | 39,519 | 177 | 19.81 | 1.0 | 20.4 | 50 |
FY2024 | 40,594 | 4,419 | 495.09 | 21.8 | 25.2 | 60 |
FY2025 | 43,371 | 4,204 | 436.09 | 15.7 | 31.8 | 60 |
FY2026(予) | 40,000 | 2,950 | 264.80 | ― | ― | 60(予定) |
5. 中長期戦略の展望
関西電力は、安定的な電力供給を確保しつつ、2050年ゼロカーボンの実現に向けて、以下のような取り組みを進めています:
再生可能エネルギーの拡大と系統強靱化
原子力の安全強化と再稼働推進
水素・アンモニア混焼技術の開発
通信・海外事業への多角化とDX推進
これらは構造的な成長要素となる一方で、利益貢献は中長期的となる見通しです。
6. 投資判断のポイント
関西電力は、安定した配当政策・健全な財務体質・エネルギー移行リーダーとしてのポジションを有しています。一方で、今後数年間は利益の反動減と高い設備投資負担が株価の上値を抑える可能性もあります。
結論
配当重視またはESGを重視した長期投資家にとっては検討の価値あり
ただし、短期的な利益成長を期待する投資家にとっては慎重な見極めが必要
免責事項
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