東京メトロのグローバル戦略転換:2025~2027年中期経営計画
2025年7月28日、東京メトロは2025~2027年度の中期経営計画を発表しました。約3.5兆円におよぶ3年間の投資計画の柱は、海外鉄道事業の拡大、インフラの高度化、駅を核とした都市開発です。
1. 海外事業の本格展開:「東京発、世界へ」
初の海外鉄道運営
東京メトロは、ロンドンのエリザベス線の運営・保守(O&M)権を、住友商事・英国Go-Ahead社と共同で取得。2025年5月から運行を開始予定で、同社にとって初の海外鉄道運営業務となります。
海外コンサル・人材育成
ベトナムやフィリピンをはじめとする各国で、信号・運行・インフラ整備に関する技術支援を提供。あわせて、鉄道運営のノウハウを提供する「東京メトロアカデミー」をグローバルに展開(B2Bサービスとして)。
2. 鉄道インフラへの集中投資:安全・自動化・快適性の向上
2025~2027年度にかけて、鉄道事業に2,430億円を投資。
特に以下の分野に重点を置きます:
投資項目 | 金額 |
---|---|
浸水対策・信号更新 | 1,110億円 |
新型車両導入(半蔵門線・南北線) | 90億円 |
バリアフリー設備 | 230億円 |
自動運転・ワンマン運転 | 240億円 |
※CBTC(無線式列車制御)、ホームドア、エレベーターなどの整備を加速。少子高齢化による人手不足に備えた半自動運転体制の構築が重要視されています。
3. 新路線の建設:2030年代を見据えた整備
以下の2路線の延伸計画が進行中で、2030年代半ばの完成を目指します:
有楽町線延伸(豊洲~住吉、4.8km)
南北線延伸(白金高輪~品川、2.5km)
有楽町線は将来的に、東武スカイツリーライン・伊勢崎線・日光線との直通運転も視野に入れており、都心と郊外の接続性を大きく高める見通しです。
4. 駅を核とした都市・生活開発(スマートシティ構想)
都市生活部門には1,070億円を投資予定。代表的な開発は以下の通りです:
新宿西口再開発
銀座二丁目再整備
駅ナカ・高架下の商業空間リニューアル
駅を単なる交通拠点ではなく、生活・商業・交流の中心に変える「駅中心型都市開発(TOD)」を推進。これは世界の先進都市でも採用されている戦略です。
5. ボーダーレスな未来へ向けたビジョン
東京メトロはこの戦略を通じて、以下の3つの役割を担うことを目指しています:
国内では、安全・快適性・自動化を備えた「次世代型モビリティ基盤」
海外では、アジア・欧州で活躍する「グローバル鉄道事業者・コンサルタント」
都市では、「交通を起点とするスマートシティの開発者」
投資家向け注目ポイント
指標 | 2025年度 | 2026年度(予想) |
---|---|---|
鉄道関連設備投資 | 2,430億円 | 増加傾向 |
海外売上構成比 | 1%未満 | 成長期待分野 |
不動産(都市開発)投資 | 1,070億円 | 複合開発中心に増加 |
配当性向 | 40%以上 | 維持予定 |
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、投資判断を助言・推奨するものではありません。投資に際してはご自身の判断と責任において行ってください。Wasabi Info.comは当内容に基づく投資結果に一切責任を負いません。